残暑、猛暑、酷暑…暑さは彼岸で終わりじゃ
ないのか?そう思える日差しだった。陽炎が
揺らめくのか、自分が朦朧としているのか、
それすらもわからない。灼熱のサーキットは
夏の祭典を思わせるようにヒートしている。
戦いはまず自分に勝たなければならない。革
ツナギを着るだけで汗が吹き出し、20分走
るだけで気が遠くなる。小型とはいえピット
ロードをバイクを押して走るのは辛い。それ
でも走るのはマゾヒスティックなのだろう。
勝ったところで賞金は出ない、賞賛と引き換
えに次回のペナルティ(ピットイン回数が増
える)を貰うだけだ。それでもイイオトナが
本気になってコースを駆け抜け、作を練り、
大声で叫び、似顔絵を描き、足ツボに悲鳴を
あげ、尻キックに悶絶し…ん、そうなのか?
そうなのだ!速さだけでなく、他の様々な条
件を満たしたチームに勝利の女神は微笑む。
と書いたが、俺はアイスを差し入れただけ。
夕刻の気持ち良い風を一緒に受けるために。