春の訪れは花が教えてくれる。桃の花が咲き 梅が香りだし、桜が散ると里は緑に変わる。 その桃、梅、桜が一度に開花することから、 その町は美晴と呼ばれている。有名な滝桜を 見に訪れたのは夕闇が迫る刻だった。山に囲 まれた町は幹線道路から離れると人気ない。 街灯の少ない町はヘッドライトの中の景色の 他は漆黒だが、街道沿いに桜並木が見えた。 光を浴びた桜が見たい。町はずれに宿をとり、 夜明け前に走り出す。大型車両が行きかう道 は幅も広く、朝のうちなら交通量も少ない。 しばし中速コーナーの続くワインディングを 堪能し昨夜抜けた道を戻る。今年も桜を各地 で見たがその場所毎の風情がある。さながら ここは未来に残したい日本の原風景…かな。 夜明け直後のオレンジ色の陽光が当たらない 山間の桜は、ほのかに色づいて真っ青な空に 向かって伸びている。今年の桜はここまで、 前線を追いかけて北上する旅も楽しかった。 少し寒い春風が吹き、花弁が静かに舞った。
https://www.instagram.com/p/BhiOGWbnxEl/?utm_source=ig_web_button_share_sheet